第183章

大島莉理は問わない、考えない。――同僚たちの妙な空気も、見えていないことにした。

出勤前にコーヒーを一杯。いつもの習慣だ。オフィスに戻ってマグを取り、給湯室へ向かう。

扉の前まで来たところで、中からひそひそ声が聞こえてきた。

「だからさ、田中社長が大島部長を抱っこして運んでたんだって。俺、目の前で見たもん!」

「え、マジ? うわー、見たかった」

「離婚したばっかで田中社長と……って、手腕すごくない?」

「いや、でもさ。男は独身、女も独身なんだし、普通じゃない?」

「でも大島部長、バツイチだろ?」

背後から足音。佐伯清司が近づいてきて、その会話を耳にした瞬間、勢いよく扉を押し開...

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